マレーシア国民大学(UKM: Universiti Kebangsaan Malaysia)訪問報告 2/12-13

2015年2月11日~12日の2日間、UKMを訪問したので報告したい。今回の訪問の目的は大きく分けて2つあり、1つは、本年5月に予定されている新潟大学とUKMのMOU Addendum更新の打合せと、MOUに基づいて現在在籍しているダブルディグリー博士課程大学院生の研究進捗の確認のためである。
今回のUKM訪問では、ダブルディグリー博士課程大学院生であり、UKMの講師でもあるロハイザ氏(Dr. Rohaziat)が全ての調整役を担ってくれた。また、色々な場面において新潟に短期留学した経験のある学生がサポートしてくれた。


写真 UKM地域保健学講座疫学部門のメンバーと

2月11日
午前よりUKM医学キャンパスを訪問した。UKM側の交流窓口となっているDepartment of Community Health(地域保健学講座)のHead of Departmentであるリザル教授と面談した。リザル教授は5月のMOU Addendum調印式のために来日の予定である。MOUを基礎として、今後も実りある交流と研究の発展を願っているとのことであった。
地域保健学科の中には6つの部門があり、そのうちの一つであるEpidemiology Unit(疫学部門)のシャムスル教授は新潟大学医学部公衆衛生学分野(現・国際保健学分野)で博士号を取得し、その後も折あるごとに学生交流のサポート等を通して新潟大学との関わりを持ってくれている。シャムスル教授は1月まで特別研究期間(サバティカル)のため、イエメンに9ヶ月間滞在していたが、今回、イエメンから戻り、久しぶりの再会となった。疫学部門のスタッフであるシャムスル教授、ロハイザ氏、ナザルディン氏(講師)を交えて、MOU Addendum更新のための詳しい打合せをした。内容的には現行のまま更新できればよいというのが一致した意見であった。さらにUKM側よりダブルディグリーを希望する学生がいるということであったが、研究テーマはデング熱の研究であり、血清サンプルを用いての実験室的解析が必須であり、今後、新潟大学側で受け入れの可否について議論が必要である。


写真 MOU Addendum更新とダブルディグリー研究進捗について議論

さらには、現在、ダブルディグリーに在籍しているロハイザ氏の研究進捗について確認し、今後の予定を話し合った。特に、インフルエンザ研究のための検体採取に苦心していたが、最近ようやく軌道に乗ってきたとのことであった。マレーシアで集めた検体を用いて、本年4月の来日の際に国際保健学で実験と解析を行う予定である。
2月13日より新潟大学に短期留学生として受け入れる2名のUKM医学部4年生とも顔合わせし、新潟でのスケジュールを確認した。今回の来日は約1週間と非常に短いが、井口清太郎特任教授(総合地域医療学講座)が小出の地域医療見学を計画していただいたほか、新潟市民病院訪問、高齢者施設見学、UKM留学経験のある本学の学生による交流などを計画している。

2月12日
ダブルディグリー博士課程大学院生であるロハイザ氏の研究進捗の確認として、ロハイザ氏が呼吸器検体を集めてもらっている医院1カ所と病院1カ所を訪問した。今回、研究に協力してくれている医師の一人に会うことができた。協力医は元軍医で、現在は家庭医をしているというロハイザ氏の親戚ということであった。呼吸器検体の収集は今年1月に始めたばかりであるが、すでに20検体以上を採取してくれていた。インフルエンザキット陽性の患者はその中に1名(B型)のみだったようで、なぜそのように低い割合なのか、臨床症状の特徴や他の疾患との比較等々について話し合い、さらなる協力をお願いした。


写真 協力医の医院

ダブルディグリー博士課程大学院生のロハイザ氏は患者からの検体採取と情報収集を行うために、患者へのインフォームドコンセントや収集データの管理を綿密に計画してきたが、なかなか思うように検体を集めることができず苦心している。インフルエンザ様の症状を来して来院する患者は非常に多いが、協力医院の医師が日常的に忙しく、検体採取や患者への説明をする時間がないということだった。また、発熱患者は多くても、デング熱や他のウイルスによる病気でありインフルエンザではないことも日本に比べて多いようである。今回、苦労してようやく採取した検体による遺伝子解析に成功すれば、今後、マレーシアのインフルエンザ分子疫学的特徴を明らかにしていくことができる。


写真 協力医の病院へ検体を回収しに行くロハイザ氏


以前、UKMMC(UKMメディカルセンター=大学病院)のビル内にあったUKM側の交流窓口となっているDepartment of Community Health(地域保健部門)の一部が昨年新しく完成したばかりのビルに移っていた。このビルは医学部棟として使用しているそうで、以前はUKMの医学部1,2年生は全学キャンパスで学んでいたが、ビルができてから講義や実習をこのビルの中で全て行うことができるようになったとのことである。


写真 真新しい医学部棟ビルのロビー


今後も、アジアのエビデンスを創出して行くべく、活発な交流を継続していきたい。

(by Yugo)