H7N9情報は移転しました!

H7N9情報は、以下のURLに移転しました。

http://h7n9flu-information.hatenablog.com/

ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。

こちらのブログでは、国際保健学教室ブログを継続していきます。
どうぞよろしくお願いします。

さて、これまで温めておりましたブログネタを公開します。
3月末にマレーシアに行ってまいりましたので報告します。

マレーシア・ケバングサン大学(UKM:Universiti Kebangsaan Malaysia)訪問報告(平成25年3月24日〜27日)

2013年3月24日、齋藤先生と私(菖蒲川)は、午前のマレーシア航空MH89便で成田空港よりクアラルンプールに向かった。同日夜、クアラルンプール国際空港に到着。今後も新潟大学関係の世話役となってくれるというUKMの大学院生が到着ロビーで待っていてくれた。気温が30度を超えるという新潟の冬からは全くかけ離れた気候であったが、すぐに慣れ、心地よささえ感じた。
翌日、私はダブルディグリープログラムの博士課程入学予定のDr. Rohaizatにクアラルンプール市内と政治機能の全てが移転して集まっているというプトラジャヤを案内してもらった。各省庁のビルが左右に建ち並び、一番奥には人造の湖に囲まれた首相官邸がある(写真下)。

巨大な省庁のビルは一つ一つが個性ある形をしていて立派だった(写真上)。

省庁のビルが建ち並ぶストリートのつきあたりには、まるで宇宙船のような形をした巨大なコンベンションセンターがそびえ立っていた(写真上)。
Dr. Rohaizatの話によれば、国際会議が開かれるのはまれだという。いったいどれほどのお金がかかったのか・・・前首相の方針でこのような首都機能移転を行ったとのこと。最初はお金の無駄遣いだと国民の世論もあったようだが、今では、全ての政治機能が集まっているので、とても便利だという人もいるらしい。各省庁のビルが集まったメインストリートから見えるビルやアパートは、全て政府関係で働く人々の住居だという。
立派なモスクもあり、中を見ることができた(写真下)。

一大政治都市といった様相で、不思議な雰囲気を感じた。マレーシアは東南アジアの中では本当に進んでいる国だと実感した。 プトラジャヤは空港からも近い位置にあり、空港の側にはF1レースのサーキットがある。ちょうどマレーシアGPが開催された翌日とのことだった。まだ、片付けの人が資材の撤去などに忙しそうだった。このF1サーキットも前首相の構想で作ったと聞いて驚いた。


 3月26日朝、空港に迎えに来てくれた大学院生がホテルロビーまで来てくれた。一路Dr. ShamsulとDr. RohaizatのいるUKMメディカルセンターに向かう。地域医学分野のロビーにはいくつかの大学とのMOUの締結書が立派に飾られていた(写真)。

新潟大学医学部との締結書もこの中にあった。また、最初に行われた締結式の写真も一緒に飾られていた。Dr. Shamsulとの再会を喜び、お土産の交換の後、さっそく意見交換、ディスカッションに入った。議題はMOU延長の件、学生・大学院生の交流計画の件、そしてDr. Rohaizatのダブルディグリープログラムの研究計画など多岐にわたった。


 この後、Dr. Rohaizatの車に乗り、ダブルディグリープログラムの主なプロジェクトとなるクアラルンプールにおけるインフルエンザサーベイランスの拠点病院の1つである市内のクリニックを訪問した。昼休みの時間となっており、患者さんは狭いロビーに数名程度であったが、説明によると、朝7時には長い列になっているそうだ。マレーシアの医療保険制度は日本と異なり、高いプライベートの医療保険をかけていなければプライベートの医院や病院にはかかれない。誰もがかかることができ、値段も安い公立の医院や病院には毎朝長い列ができるということだ。迎えてくれたのはDr. Saharuddin Ahmad、ひげを生やした中年(?)の優しそうな男性医師だ(写真)。


↑ クリニックの状況について丁寧に説明するDr. Saharuddin(左)とそれを聞く齋藤教授(中央)とこの4月にダブルディグリー入学予定のDr. Rohaizat

クリニックは内科の医院で8割は慢性疾患(糖尿病、高血圧など)の患者さんだとのこと。一日100〜200名程度の患者さんを診ているそうだ。診察室は12あるが、十分に足りておらず、医師の数のほうが多いとのこと。ときには診察室をシェアして使わなくてはならないこともあるそうだ。建物や部屋の様子は決して新しくはないが、診察室にはコンピュータがあり、検査結果などは全てコンピュータでチェックが可能だということだった。簡単な検査室もあり、採血が行われているとのこと。鼻腔拭い検体は採ったことがない、と技師さんがDrに答えていた(!)。

Dr. Rohaizatの研究計画はインフルエンザサーベイランスであり、医院での話題も最初はインフルエンザや感染症に関する話題が主であったが、クリニックには糖尿病患者さんの教育施設や透析施設までがあると聞いて、一気にNCD(Non Communicable Disease)の話に花が咲いた。マレーシアでは糖尿病が大きな問題になっており、いまや国民の15-20%近くが糖尿病にかかっているほどであるという。このクリニックでも患者教育に力を入れており、糖尿病と診断された場合、血液検査、尿検査だけでなく眼底検査や栄養士による栄養指導を行っているという。さらに驚いたことに、これらの患者さんのエントリーシートや血糖値などの記録が全て医院で把握されているとのこと。壁1面の本棚いっぱいに患者さんの糖尿病記録紙が並んでいた(写真下)。

これは素晴らしいコホートだ!Dr. Shamsulが叫んだ。研究用にオーガナイズされたものかどうか分からないが、とにかく十分な情報が目の前に並んでいることは理解できた。今後、NCDを含めた疫学分野での共同研究が楽しみになってきた。

途中から合流したDr. Hizlinda Tohidは女性のドクターで禁煙治療に力を入れているという。また、CKDを扱うユニットも別にあると教えてくれた。短い時間だったが、とても多くの未来の可能性を感じた。今後の共同研究がますます楽しみになってきた。
 3月27日は早朝より空港へ向かい、午前の便で帰国した。夜半には新潟の自宅に到着した。マレーシア滞在時間は短かったが、Dr. ShamsulとDr. Rohaizatとのディスカッションや、市中のクリニックの状況視察をすることができ、非常に内容の濃い訪問となった。

(by Yugo)